ここ最近、Facebook、instagram、Twitterを中心に数年間動きのなかったSNS界にちょっとした動きが目立ちますね。
新興SNSが世間を騒がせて、「これからの定番になるか?」なんて議論もあちこちで巻き起こっています。
そこで、今回はちょっと趣向を変えて、今ブームになっている新興SNS「Clubhouse」と「Dispo」から、現代のUX設計のあり方についてちょっと考察してみたいと思います。
長くなってしまったので、前後編に分けることにしました。
前編は、ClubhouseとDispoのUX設計について解説していきます。
もくじ
突如ブームとなった新興SNS!まずは概要をチェック
半月ほど前に、主にTwitterを中心に一気に話題になった「Clubhouse」。
そして、数日前に同じく突如表れて各所でブームが巻き起こっている「Dispo」。
知っている人も多いと思いますが、まずは、それぞれのSNSの特徴について簡単にチェックしておきましょう。
Clubhouse
1月末頃に日本国内で突如話題に上がり、「誰か招待して!」の大合唱を巻き起こしたClubhouse。
2020年3月にサンフランシスコで発祥した、「音声版Twitter」とも呼ばれるSNSです。
そんなClubhouseの特徴は、ざっとこんな感じです。
- 完全招待制(当初の招待枠は1ユーザー2名まで)
- 「雑談」にフォーカス
- アーカイブ機能なし・録音禁止
- 実名登録推奨
招待されないと参加できないというのが、爆発的に話題となった一因でしたね。
おそらくは狙い通りだったのでしょう。
SNSの趣旨としての特徴は「雑談」にフォーカスしたこと。
そこでしか聞けないライブ感満載の雑談を楽しむ新しい形のSNSとして注目を浴びています。
Dispo
2月14日ごろから、Clubhouseのときと同じく話題が一気に広まったのが、写真投稿型SNSのDispo。
こちらも、主な特徴をざっくりご紹介します。
- アプリで撮影した写真が、翌朝9時にならないと見られない
- 撮った写真の仕上がりは、やや粗くレトロな感じ
- 撮った写真を友達と共有し、リアクションし合える
- 完全招待制(招待枠は1ユーザー20名まで)
こちらも完全招待制となってはいますが、Clubhouseと比べて20名と多めなので、そこまで大きな特徴とは言えないかもしれません。
Dispo最大の特徴は、何と言っても撮影した写真がすぐに見られないこと。
使い捨てカメラをモチーフにした機能で、「現像するまでのワクワク感」を味わいつつ、レトロでエモい写真を友人と共有できるのがこのアプリのSNSの醍醐味となっています。
ClubhouseとDispoをUXで考える
「優れた機能」では語れない。徹底的にデザインされたユーザー体験
前回の記事で、「サービスの利用中だけでなく、その前後を含めてUX」「機能で差別化を図ることが難しくなったため、ユーザーの体験にフォーカスされるようになった」と書きました。
この2つのSNSは、まさに現代のUX設計を象徴するアプリであると言えるほど、徹底的にユーザー体験をデザインしてつくられたということができると思います。
利用前から盛り上げる「完全招待制」
まず、「完全招待制」というのがポイント。
特にClubhouseは、まだ招待されていないアーリーアダプター、アーリーマジョリティ勢に「こんなに話題になっているのに参加できない!」という焦りを生じさせ、それが拡散と期待感の高まりにつながりました。
サービス利用前の「予期的UX」でこれだけ話題になったというのは画期的だったのではないでしょうか。
機能を「あえて制限」することで、ここでしかできない体験を生む
Clubhouseは、音声コンテンツとしては異例の「アーカイブ機能なし」で、さらに録音も禁止されているので、いま繰り広げられている話は今しか聞けません。
これが、「話に乗り遅れたくない」という心理を駆り立て、あまりに長時間接続し続けてしまう人が続出しました。
「SNS疲れ」なんて言葉ももはや使い古されてきた時代に、とんでもないマインドシェアの獲得方法だったなと感じます。
Dispoは、撮った写真をすぐに見られないという制限で、現像しなければ写真を見られなかった時代の感覚を演出。
普通の画質ではなく、味のあるレトロな雰囲気の仕上がりになるのも、日々「キレイに写す」技術が進む時代に逆行した仕様だと言えます。
これらは、今までにあったSNSやサービスに対して、機能を「あえて制限」することで、このアプリでしか得られない体験をつくり出したという点で共通しています。
当然ながら、特別な新しい技術を用いたわけではないので、アイデア一本で新しいユーザー体験をつくり出した好例と言えますね。
人とつながる、新しいプラットフォーム
ClubhouseもDispoもSNSということで、もちろん人とつながることが大きなポイントとなります。
Clubhouseの醍醐味は、今までありそうでなかった「ユーザー同士で直接会話できる」というところ。
有名人やインフルエンサーのリアルな声を聞けるのはもちろんのこと、もしかすると直接おしゃべるできるチャンスが訪れるかもしれません。
インフルエンサー同士の「Clubhouseで対談します」という企画も頻発していますね。
また、友人同士の雑談にも気軽に使えるので、例えばサークル内でトークルームを作っておけば、空いている人がいつでも参加できる場にすることができ、LINEやzoomに代わる新しい会話のプラットフォームの一面も見せています。
Dispoは、撮った写真を友人同士で共有できるので、instagram以上に「一緒に参加している」感が高まりそう(すみません、僕Dispoは未体験なのでここは想像です)。
自分が撮った写真の出来をすぐにチェックすることができない中で、エモい写真を披露し合う場にもなるので、ハマる人はどっぷりハマってしまう気がしますね。
誰かの配信を一方的に聞くだけ、写真をただ投稿するだけではなく、近い距離感でつながるだけに、「あの人が参加しているから、自分も早く参加しなきゃ。時間が空いたらすぐにアクセスしなきゃ」という思いを駆り立てるUX設計となっているように思います。
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前編はここまで。
後編で、これらのSNSが提供するUXの立ち位置と「定着していくか?」ということを考えていきます。