雇用することのリスクが上がり、アウトソーシングの手段も多様になった現代。
業種にもよりますが、「外注するか、内製するか?」で悩む企業は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、外注と内製について、チームビルディングという切り口で見た場合の判断基準について、考えてみたいと思います。
この記事を読むと……
●外注と内製それぞれのメリット・デメリットを整理できる
●よりよい外注先を選ぶためのヒントをつかめる
●外注先を交えてのチームビルディングのコツがわかる
もくじ
外注・内製のメリットとデメリットを整理しよう
外注のメリット
社内にないスキルを使える
アウトソーシングを活用する最大のメリットとも言ってもいいかもしれません。
社内のノウハウやスキルでは対応できない仕事でも、外部の力を借りれば請け負うことができます。
成果物のクオリティを上げたり、提案の幅を広げるのに直結するため、外注するうえで非常に重要なポイントになるでしょう。
スピーディーに人手不足を補える
こちらも、アウトソーシングを利用する大きなメリット、というよりは、そもそもの目的であることも多いですよね。
受注する仕事量が増えて、社内の体制で対応できなくなったときには、当面の人手不足を補うために外注先を探す企業も多いと思います。
採用したり、再教育しようと思ったらある程度のコストと時間がかかりますが、信用できる外注先がいれば、必要なときに必要な分だけ手を貸してもらうことができるので、大いに助けになるかもしれません。
案件に応じた外注先を選べる
同じ業務を行う外注先でも、それぞれ得意分野が異なるでしょう。
たとえば、Web制作会社でいうと、洗練されたデザインが得意な会社、複雑なシステムまで組める会社、ある業界のWebサイトに特化した会社など、様々な特徴があるので、案件に応じて発注先を決めれば、常に高いクオリティで制作することが可能になります。
人件費・設備費などを削減できる
従業員を新たに雇うとなれば、当然ながら毎月賃金が発生します。
従業員自身が目にする額面の給与だけでなく、社会保険料などの負担もあるので、財務において人件費は大きな要素となります。
さらに、これは業種によって変わりますが、デスクやパソコン、携帯など、従業員ごとに用意しているものがあれば、人が増えれば増えるほど設備費としてかさんでいきます。
外注する分には、これらはかかりません。
もちろん、外注費はかかることになりますが、固定費としての負担が減ることはメリットになると言えるでしょう。
外注のデメリット
外注コストがかかる
当たり前ですが、発注したらその分の費用がかかります。
基本的には、この費用と内製コスト(人件費)を中長期スパンで比較して費用対効果を見ていくことになるでしょう。
固定費としてかかるわけではなく、設備費もかからないのは利点ですが、マネジメントコストも忘れてはいけません。
外注先の選定、見積もり依頼、発注、進行管理、クオリティ管理、支払いなど、外注先とのやりとりもそれなりの工数が発生します。
繰り返し発注して、お互いのことを理解して仕事を進められるようになればマネジメントコストは最小限に抑えられるようになりますが、新規の外注先のときは予想外に手を取られる可能性もあるので気をつけましょう。
クオリティやスピードにバラつきがある
外注先によって、得意領域や仕事の質、体制が異なるため、成果物のクオリティや納品までのスピードにも差が生まれます。
うまく管理できないと、同じクライアントへの納品物にバラつきが出ることになり、相手からの信用を失いかねません。
一定のクオリティを担保するという意味でも、できればひとつのクライアントの案件で毎回異なる外注先に発注するのは避けるのが懸命かもしれません。
社内の実績・ノウハウとして蓄積しづらい
自社で受けた案件といっても、外部に発注すると、スキルやノウハウとして蓄積するのは発注先ということになります。
額面上は「実績」として提示できますが、仮にその外注先が仕事を受けてくれなくなったら、同等の製品を生産できなくなるかもしれません。
もちろん、外注先との良好な関係も会社にとっては資産となりますが、自社内のノウハウとトレードオフになることも把握しておきましょう。
自社の理念やビジョンへの理解がない
仕事を外注するとき、どんな案件で、何をしてもらうのか、ということは詳しく伝えますが、「自社がどんな会社なのか」ということまではそこまで伝えないですよね。
それでも特に問題なく納品されるケースも多いのですが、ときにはそれが原因でクライアントから不満が出るケースも考えられます。
外注先とは自社の理念やビジョン、価値観と、それに応じた進め方などについてもある程度すり合わせておく必要があると思います。
内製のメリット
各フェーズの担当者、部門間のやりとりがスムーズ
内製の場合、役割の違う相手も同じ社内にいる人間なので、単純に物理的な距離が近く、やりとりが楽になります。
また、社内のルールや慣習もお互いに理解しているので、話も通じやすく仕事をスムーズに進められるでしょう。
やったことがそのまま実績・ノウハウになる
社内でやったことは、そのまま実績としてもノウハウとしても蓄積されます。
初めての案件で四苦八苦しながら納品したとしても、次回似たタイプの相談を受けたときには自信を持って対応できますよね。
会社としてのスキルアップが見えやすいのは、内製することのメリットのひとつとして挙げられます。
機密漏洩のリスクが低い
仕事を進めるうえでは、どうしても企業秘密としているようなことだったり、顧客などの個人情報を取り扱うことも出てくるので、外注する場合は漏洩のリスクがつきまといます。
内製でももちろん100%防げるわけではありませんが、リスク管理のためのコストには大きな違いがあると言えます。
内製のデメリット
仕事の有無に関わらず人件費などの固定費が発生する
外注のメリットのところでも書きましたが、内製を増やすならその分社内の人的リソースを確保する必要があり、従業員を増やすとその分固定費として人件費が発生します。
安定して仕事があるならそれほど問題ないかもしれませんが、受注量に波があると、任せられる仕事が少ないときにも同じだけの賃金を支払うことになります(成果報酬制の場合は別ですが)。
経営者の方なら実感することも多いと思いますが、「固定費をいかに減らすか」はいつの時代も大きな課題なので、これは大きなデメリットであると言えるでしょう。
限られたリソース内での仕事になる
内製で仕事を完結させようと思うと、当たり前ですが「社内のリソースでできること」の範囲でしか仕事を受けられません。
新しい相談を受けても、ノウハウのある従業員や専用の設備がなければ断ることになりますし、苦手領域の仕事だとクオリティ面で競合に勝てないことも出てきます。
逆に言うと、内製中心の会社は、従業員一人ひとりのスキルアップや、設備投資への意識を高めていく必要がある、ということです。
人に依存すると積み上げたノウハウがそのまま出ていくリスクがある
特に中小企業には多いと思うのですが、特定の仕事が完全に「少数の人」に依存してしまっているというケースは危険です。
その人が抜けることがあれば、今までできていたこともできなくなる恐れがあり、さらには仕事だけ残って管理できないというようなケースも考えられます。
もちろん、人に依存せず社内でノウハウの共有やシステム化ができれば問題ないのですが、それが難しい場合は、いざというときに頼れる外注先をいくつか見つけておくことも必要かもしれません。
仕事を外注するときに気をつけること
外注先は「同じチーム」なのか
そもそも、外注先は「チームメイト」になるのでしょうか。
案件の性質や発注内容、期間の長さによっても変わってくるので一概には言えませんが、僕たちとしては「クライアントやエンドユーザーに提供するものを一緒に作り上げる以上、外注先も含めてチーム」という考え方をしたほうがいいと思っています。
もちろん、あなたの外注先から見ればあなたの会社は「クライアント」になりますが、お客様から見ればそんなことは関係ありません。
内製した部分も、外注先がやった部分も、どちらも「あなたの会社の仕事」として見られることになるわけです。
「内製部分はチームでの仕事で、外注部分はチーム外の仕事なので、仕事のやり方やクオリティは変わります」なんて、無責任なこと言えませんよね。
だから、「外注先もチームの一員」なんです。
外注先を選ぶときのポイント
自社の理念やビジョンを理解してもらえる
外注先もチームだと考えると、チームビルディングにおいて大切なことは、外注先との間でも意識する必要があります。
こちらの記事で書いたとおり、チームビルディングの鍵のひとつに「組織力(みんなで同じビジョン、目標に向かっていくこと)」がありますが、これは外注のデメリットでも触れた「自社の理念やビジョンへの理解がない」という部分に密接に関わってきます。
たとえば、「お客様の安心感を重視する」という理念でやっている会社が、ある案件の一部のフェーズだけ外注したとします。
理念が浸透していれば、社内で仕事を進める部分は、案件着手時の説明を手厚くしたり、クライアントにマメに連絡して進捗を伝えたりということを自然にやりますよね。
ところが、それを知らない外注先に発注すると、クライアントへのヒアリングは最初だけで、あとは制作に没頭してしまうかもしれません。
クライアントからすると、ある時から突然フォローが減って、突然できあがったものが上がってくることになり、サービスの一貫性に疑問が生まれます。
自社はどんな価値観で、どんな世界を目指してビジネスをしていて、顧客にどんな価値を提供しているのか。
これを理解してもらうことが、良いパートナーになる外注先の条件のひとつになるでしょう。
理想は、理解だけでなく、「共感」までしてもらえること。
共感されるということはその外注先のビジョンにも通じるところがあるはずで、そうなると相手のモチベーションも自然に高まります。
「自社のパートナー」としてクライアントに紹介するイメージが湧く
感覚的なことになってしまいますが、これがけっこう重要なポイントなのではないかと思います。
「この会社(人)が、一緒にサービスを創っている弊社のパートナーです」と自信を持ってクライアントに伝えられるかどうか。
実際に紹介するかどうかは別として、紹介した際に相手に不安を抱かせたり、それぞれの会社のブランドイメージや方針と食い違うような外注先だと、チームの一員として付き合っていくのはなかなか難しいでしょう。
まずは、ビジネスをする関係で当たり前のことですが、時間や約束を守ること、ちゃんとクライアント(あなたの会社のお客様)のことを誠実に考えてくれる相手かどうかを見極めることはとても大切です。
お互いに情報共有したり、強みを伸ばし合える
外注先に、自分たちではできない領域だけを納品してもらっておしまい。
・・・ではなくて、お互いに色々な情報やノウハウを共有したり、スキルアップの機会を与え合えるような関係になれると理想ですよね。
別組織なのでなかなかそこまで望むのは難しいかもしれませんが、中長期的にチームとして仕事をしていくなら、双方が成長していかないとだんだんと釣り合わなくなってくるもの。
案件ごとに苦手な領域を担い合うだけの「チームワーク」の関係に終わらせず、お互いのやる気や能力を引き出し合い、次の仕事につなげていける「チームビルディング」の関係を築けるような外注先を見つけられれば、きっとwin-winの関係で長くパートナーとして付き合っていけるでしょう。
まとめ
今回は、チームビルディングの観点から、外注を活用することについて考えてきました。
外注を使うと、社内ではできない領域やクオリティの高い仕事ができたり、人手不足を補えたりと、内製だけではできないことが可能になります。
その反面、あなたの会社の理念や価値観との一貫性のない成果物ができあがってくるという懸念も。
外注先と一緒に良い仕事をするためには、単なる下請けではなくチームの一員として捉え、お互いを理解し、認めあえる関係を築いていくことが大切です。
あなたも、仕事をアウトソーシングするときは、まず「人と人との関係を作る」ことを大前提にお付き合いを始めてみてくださいね。