突然ですが、「デザインとアートの違い」について、考えたことはありますか?
どちらも似たようなイメージという人もいると思いますが、対極にある概念だと認識している人もいるでしょう。
僕自身は、共通する部分はあるものの、まったく違うものだと思っています。
面白いのは、人それぞれで様々な解釈があって、明確な正解、不正解があるわけでもないことです。
今回は、ちょっとだけ趣向を変えて、デザインとアートの違いについて色々な観点から考察してみたいと思います。
「こんな見方もできるよね」という話なので、もちろん例外を出そうと思えば出せますが、そこらへんは気にせず、気軽に読んでもらえればと思います。
もくじ
デザインとアートの違い
【1】デザインは課題解決、アートは自己表現
これが、最もよく言われる違いかもしれませんね。
デザインは、必ず何か課題や要求があって、それを解決するために取り組まれますね。
Webサイトなら、ユーザーにある企業のことを知ってもらったり、商品を買ってもらったり、あるいはユーザー自身に発信してもらうためにデザインされます。
家なら、より快適に健康的に暮らせるようにデザインされます。
それに対して、アートは自己表現と言うことができるでしょう。
アーティストが伝えたいメッセージや、自身のうちに秘めた想いをなどを表現するのが、アートの一面。
あるいは、デザインが「課題解決(外部にある課題を解決する活動)」であるのに対して、アートは自分から声を上げて表現するので、「問題提起」という言い方をされることもありますね。
【2】デザインには目的がある、アートは目的の有無を問わない
「デザインが課題解決のため」の抽象度を上げると、「デザインには目的がある」ということができます。
さらに言い方を変えると、デザインは手段です。
目的が達成されないデザインに価値はないし、目的が達成されるなら、そこにデザインがいい、ということになるんですね。
反対に、アートの存在意義に目的の有無はあまり関係がありません。
「人を幸せにする」ことを目的としたアートがあってもいいし、デザインと同じような課題の解決を目的としていてもいい。
また、無目的に、あるいはアートそのものを目的にアートを創作してもいい、ということです。
【3】デザインはロジカル、アートはエモーショナル
デザインは課題解決を目的としているので、原則として、デザインには必ず意味があります。
「なぜこういうデザインになっているのか」ということが、「ユーザーに●●させるため」「◯◯をしやすくするため」などというふうに、ロジカルに説明できるのがデザインです。
(結果として狙い通りになるかどうかは別として)
それに対して、アートはエモーショナル、つまり感情的・情緒的であると言えるでしょう。
ただし、デザイン対アートの比較上の文脈の話であって、ロジカルなアートももちろんあるので、こちらも「問わない」というのが正確かもしれません。
【4】デザインは利用者中心、アートは表現者中心
デザインは、ユーザーがいないと成立しません。
しつこいようですが、「ユーザーの抱える課題や要求をどう解決するか」が趣旨なので、当然ながらユーザー先にありきとなります。
どんなに優れた機能をもった機械でも、使い方が複雑で、製作者以外誰も使えなかったら意味がありませんよね。
これを、利用者がきちんと使えるようにするのが、デザインの役割です。
一方、アートは多くの場合、中心にいるのはアーティストです。
アーティストが何を表現したいのか、何を伝えたいのか、というのが先にあって、鑑賞者がそこから何かを感じ取る、という構図ですね。
よく例示されるのは、「iPhoneをデザインした人の名前を答えられますか?」という質問。
有名な絵画を描いた画家の名前は知られていますが、世界中の誰もが知っているようなプロダクトでも、デザイナーの名前は知られていませんよね、という話です。
ちなみに、iPhoneのデザイナーの名前はジョナサン・アイブ氏です。
【5】デザインは客観的、アートは主観的
【3】や【4】にも通じる話ですが、デザインは客観的で、アートは主観的である、という見方もあります。
目的があり、ロジカルであるがゆえに、デザインはある程度、客観的な評価が可能になります。
また、基本的には、デザイナーの主観よりも、客観的な納得感や妥当性を優先すべき活動であると言えるでしょう。
最もわかりやすいのは、数字で結果が出る例。
「問い合わせ数を稼ぐためのWebサイト」を目指して、内容はまったく変えずにデザインだけリニューアルした結果、問い合わせ数がアップしたとすれば、リニューアル後のほうが優れたデザインである、と言って問題ないでしょう。
もちろん、数値で測れない課題や、評価の部分でユーザーの主観が入るケース(見やすさ、使いやすさなど)もあるので一概に言えるものではありませんが、いずれにしても主観だけでは成立しないのがデザインです。
そして、言うまでもないかもしれませんが、そもそもが自己表現であるため、アートは主観的な要素が強くなります。
評価軸もまったく主観的で、どんなに高名な画家の絵よりも、素人が描いたある絵が気に入ったとすれば、あなたにとっては、後者のほうが価値がある、ということになります。
まとめ
ということで、今回は5つの視点から、デザインとアートの違いについて考えてみました。
他にも、「美」への捉え方だったり、自由度だったり、色々な捉え方ができそうですね。
そもそも「デザイン対アート」という二項対立の関係で論じることに無理がある、という考え方もあるでしょう。
あるいは「デザインもアートの中の一部」とか「アートの一要素にデザインがある」といった考え方もできると思います。
いずれにしても、私たちの身のまわりはあらゆるデザインで溢れているし、アート作品と呼べるものも思いのほかたくさんあり、どちらも日常から切っても切り離せないものです。
普段意識しなくても、実は人生に与えている影響もかなり大きいはず。
あなたもぜひ、「デザインってなんだろう」「アートってなんだろう」と、周りの人と議論を交わしてみてはいかがでしょうか。