顧客が商品を購入するまでのプロセスを可視化する「カスタマージャーニーマップ」。
前回の記事では、「理論編」ということで、このフレームワークの概要や有効性について解説しました。
後編となる今回は、実際にどんな手順で作るのかについて解説していきます。
この記事を読むと・・・
●カスタマージャーニーマップの作り方の流れがわかる
●カスタマージャーニーマップの具体例をイメージできる
●カスタマージャーニーマップをつくる上で気をつけることがわかる
もくじ
まずはしっかり準備を!
前回の記事でも書きましたが、カスタマージャーニーマップに取り掛かる前には準備が欠かせません。
「ユーザーからの資料請求数を増やす」
「顧客一人ひとりのロイヤリティを高める」
「ECサイトの売上を1.5倍にする」
など、まずはカスタマージャーニーマップを作る目的を明確にし、チーム内で共有します。
続いて、ペルソナをしっかり作り込むこと。
カスタマージャーニーは、ペルソナを元に導かれます。
ペルソナを固めずに、あんなケースも、こんなケースも、と案を出していくと、最終的に「こんな流れで行動する人、絶対いない」というマップが出来上がってしまいます。
最終目標とペルソナをしっかり準備したら、いよいよカスタマージャーニーマップの作成に入ります。
カスタマージャーニーマップのつくり方
今回は、寝具専門店が開発・販売している「車中泊特化型マットレス」という商品の戦略を立てる想定で、カスタマージャーニーマップを作っていきましょう。
まずは、縦軸を組んでいきます。
表の構成は商品やサービス、状況によって多少変わりますが、概ねこんな感じで組めばOKです。
●ステップ
●タッチポイント
●行動
●思考・感情
●課題・要求
では、「行動」から順番に中身を埋めていきましょう。
①行動
「レジャーに行く予定を立てて、それに必要なものを調べる」「大手ECサイトで商品を比較する」など、ユーザーがとる具体的な行動を記載します。
今回の場合は、「車中泊について調べたところ、車中泊に特化した寝具があることを知る(認知)」から始まり、Webや大手ECサイトで情報を収集したり、実店舗に商品を見に行ったりしながら比較検討し、最終的に寝具店のサイト内で購入、使用後には友人に教えたり、SNSにアップするところまでを描きました。
実際の行動についてある程度詳細に書きつつ、「思ったこと」などまでは言及しないようにしましょう。
②ステップ(時間軸)
横軸にあたる「ステップ」の部分を、行動に合わせて入れていきます。
商品によっては「試着」や「試乗」、あるいは「商談」などが入ることもありますが、今回のケースでは一般的な下記の5フェーズで考えていきましょう。
●気になる(認知)
●興味をもつ
●比較・検討
●購入・利用
●リピート・共有
③タッチポイント
行動をもとに、ユーザーと商品との接点となるポイントを書き出していきます。
今回の例では、主にWebサイトと店舗が挙がっていますが、場合によっては「営業マン」「販売員」などの人が入ることもあれば、「パッケージ」「看板」などが該当することもあります。
②ステップと③タッチポイントについては、①行動と同時並行で書いていってもいいと思います。
④思考・感情
「この商品が気になる」や「HPがわかりにくく不満をもった」というふうに、その行動をとったときに考えることや、抱くであろう感情です。
細かく記載する場合は、思考と感情を分けてもOKです。
UXという観点でいうと、現時点でのユーザー体験がここに表されるとも言えるでしょう。
合わせて、そのタイミングでの感情がポジティブかネガティブかを表す「感情曲線」を書くことで、購入までの流れにおける顧客の心の動きが見えてきます。
基本的には感情がネガティブになる部分を重点的に設計していくことになります。
⑤課題・要求
各フェーズにおける、ユーザーが抱える課題や要求を導き出します。
ここを導き出すために、ここまでカスタマージャーニーマップを組み立ててきたといってもいいくらい、肝になる部分。
特にUXをデザインする上では、どんなふうに体験を設計するか考える起点になるため、非常に重要なポイントです。
今回の例では、感情曲線がネガティブになる「比較検討」「購入」のフェーズの課題に注目すると、
●特徴のある専門店の商品も、Amazonや楽天で選べると楽。それぞれの商品の特徴をもっと端的に知りたい
●購入にあたり、全国的な知名度の低い店のサイトに会員登録するのは少し抵抗がある
ということなので、大手ECサイトとのわかりやすさや信頼度の差をどう埋めるか、あるいはそこをフォローするためにどんな施策を打てるか、という観点で考えていくことができそうです。
カスタマージャーニーマップをつくる際に気をつけるポイント
思い込みでつくらない
やってしまいがちなのが、作成者のイメージや思い込みで項目を埋めていくこと。
特に、無意識のうちにそれぞれの立場から見た願望や、「施策ありき」の内容に寄ってしまうのはよくあることです。
過去のデータや、ユーザーへのアンケートやインタビューなどのファクトに基づきつつ、広い視点から検証するようにしましょう。
できるだけ多くの人を巻き込んでつくる
一人、あるいは限られた立場のメンバーだけでつくると、どうしても偏ってしまいます。
他の部署や、場合によっては外部の人の目線も取り入れられれば、様々な角度で課題をあぶり出すことができます。
より多くの人から意見を募ることで、思い込みを防ぐことも期待できます。
正確さや詳細を求めすぎない
「ファクトに基づいて」ということは大切ですが、かといって、100%そのとおりのカスタマージャーニーが起こることはありません。
あくまでも、仮想人物(ペルソナ)の仮想フローです。
正確さにこだわりすぎると作成が一向に進まないし、詳細に書きすぎると余計な情報も増えて施策への落とし込みが困難になってしまいます。
間違っているということになったら、後から修正すればOKです。
データを活用しつつ、多くの人の視点を入れつつ、ある程度の思い切りをもってシンプルにマップに落とし込んでいきましょう。
適宜アップデートする
変化の激しいこの時代、半年や1年経過すると、状況がガラッと変わることもあります。
ユーザーの生活様態、社会の興味、商品のブランドイメージや知名度などに変化があれば、カスタマージャーニーも見直しが必要です。
定期的に、あるいは世の中に何か大きな変化があれば不定期でも、常にアップデートしていく体制を整えておきましょう。
まとめ
2回にわたって、カスタマージャーニーマップについてご紹介しました。
UXデザインにおいてはもちろんのこと、顧客目線の重要性が高まっているマーケティング領域でも活用の幅が広がるフレームワークです。
くったことのない方は、最初は難しいと思いますが、とりあえず今あるデータの範囲内でつくってみてはいかがでしょうか。
ひとまず形だけでも組み立ててみて、他の人の意見を入れたり、曖昧な部分を修正したりして、少しずつ改良を重ねていけばOKです。
また、企画や施策を考える際、あるいはミーティングのときにでも傍らに置いておけば、次第に活用方法もつかめていくと思います。
まずは、あなたの所属するチーム内で、気軽に取り入れてみてください。
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